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舌から考える口腔機能の評価と可能性

舌圧(ぜつあつ)という言葉は聞いた事があるでしょうか?

日常生活において、なかなか耳にすることのない言葉です。

最近では、舌圧が新しいお口の機能の評価基準として、歯科医療に新たな可能性をもたらしています。

今回は、この舌圧についてご紹介いたします。



舌の機能とは


食べ物を食べるためには舌、頬、歯、唇といった様々な器官を複雑に動かす必要があります。

その中でも舌は、食べ物を口の中に入れてから噛み砕いて飲み込むまでの一連の流れの中で重要な働きをします。

それぞれの段階に分けてご説明いたします。

≪捕食≫
食べ物を口に入れる時には歯と唇を使います。

舌は口の中に入ってきたものを受け止めて、それが「熱いのか冷たいのか」などの温度や物性を瞬時に感じ取ります。


≪咀嚼(そしゃく)≫
咀嚼とは食べ物を噛んだりすり潰したりすることです。

口に入った食べ物に咀嚼が必要な場合、当然ながら歯を使いますが、この時に舌は食べ物を歯と歯の間に移動させる働きをします。


≪嚥下(えんげ)≫
咀嚼が済んで食べ物が細かくなると、いよいよ飲み込みます。

舌はお口の中の食べ物を集めて喉の方に送る働きをします。

食べ物を飲み込む時には舌の筋力が必要になります。



舌圧が食べ物を飲み込むことに与える影響


舌の役割の一つである嚥下ですが、その能力は年齢を重ねることにより低下していきます。

口から食べ物を入れてきちんと飲み込めるか否かで、生活の質はがらりと変わります。

特に高齢者の場合は筋力や体力の低下と同様に、食べ物を飲み込む力の低下も深刻な問題になっています。

現在における死因の第3位に肺炎があります。これは65歳以上の高齢者が約95%占めており、その内の半数以上が誤嚥性肺炎という病気です。

≪誤嚥性肺炎とは≫
本来は口から食道に入るべきものが誤って気管に入ってしまうことを誤嚥と言います。

誤嚥性肺炎は、ものを飲み込む力が低下することにより唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引してしまい、その結果、吸引した細菌が繁殖して肺に炎症を起こすことを言います。

また、食べ物を飲み込む力が低下することによって、通常の食事で充分な栄養素を取ることができなくなります。すると、ものを飲み込む筋力も低下していきます。

これにより食べることができる物の形状が飲み込みやすいものに変わっていき、ものを飲み込む筋力が低下していく悪循環に陥ってしまいます。



舌圧測定は新たな「ものさし」


食べ物を噛んだりすり潰したりする咀嚼の能力の低下や、食べ物を上手く飲みこむことができない嚥下障害により、むせたり食べこぼしのある方は舌圧が低いと言えます。

そのため低栄養となる恐れがあり、低栄養になる事を防止するためには、物を食べられる形態を正しく把握する必要があります。

そのために舌圧を測定することが大切になってきます。

では、舌の圧力はどのようにして図ることができるのでしょうか?

舌の能力は歯科だけでなく医科や介護などの部門にも影響を与えると言えます。

超高齢社会に突入している日本では、医科・歯科・介護の連携がますます大切になってきます。

その中で医科や介護の方々から「この患者さんは普通に食事ができますか?」という質問をよくされます。

その時にどれだけ数値化して説明できているでしょうか。

単純に残っている歯の本数や虫歯・歯周病の進行度合い、入れ歯の適合状態などは回答できていますが、「物を食べる能力」までは数値にして示すのは難しいことでした。

これまでは舌の機能を測定し、判断できる方法がありませんでした。

しかし、最近になり「舌圧測定器」とういものができ、簡単に数値化することができるようになりました。

そのおかげで、歯科治療のみならず医科や介護との連携がとりやすくなりました。

また、舌の機能の測定結果は、患者さん自身も理解できた方が機能低下に対しての、予防やリハビルに対してのモチベーションの向上にもなります。


≪応用≫
これまで歯科治療や医療・介護との連携を行うなかで、治療効果の判断が難しかったため、行き詰っている治療もあります。

それらに対しても新たな評価基準として役立てることができます。

また、データを集めていくなかで、老化や事故に伴う舌機能の低下で、どのような食べ物であればきちんと飲み込め、栄養摂取が上手く行えるかなどを判断する時の助けになることなど、様々な応用が考えられます。



まとめ


舌は物を食べる際にたくさんの役割を担っています。

また、舌は筋肉の塊なのでその圧力は強く、歯並びにも影響を与えるほどです。

舌の能力は物を飲み込めるかどうかにも影響を与えるので、歯科のみならず医科や介護にも関わってきます。

高齢化社会が進んだ現代では様々な医療連携が必要になります。

そのため、舌の能力を正確な数値で測ることができれば、行き詰った治療に対しても新たな可能性を見つけることができるでしょう。